2026年04月06日
JENNIFER AI、インサイト(JENNIFER AI INSIGHTS)とは?― AIアプリケーション性能モニタリングとは?
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AIが変えるモニタリングのパラダイム
ITインフラの複雑化が進むなか、従来のモニタリング手法では限界が見え始めています。24時間絶え間なく発生する膨大なアラートや指標の中から、本当に重要な問題を見つけ出すことは、まるで干し草の山から針を探すようなものです。
モニタリングを超えた
― JENNIFER AI INSIGHTS
モニタリングの限界、そして新たな問い
20年間にわたりITモニタリング分野をリードしてきたジェニファーソフトは、多くのお客様と共に成長してきました。その過程で、私たちは一つの明確な事実に気づきました。それは、問題を「発見する」だけでは十分ではないということです。
従来のモニタリングツールは、システムの状態を可視化します。CPU使用率が高い、応答時間が遅い、エラーが発生している。しかし、本当に重要な問題への答えは、依然として人に委ねられていました。
「なぜ突然この問題が発生したのか?」
「どのような要因が複合的に影響しているのか?」
「根本的に解決するには、何をすべきなのか?」
熟練したエンジニアは複数のダッシュボードを行き来しながらデータを組み合わせ、過去の経験を頼りにログを一つひとつ分析します。その作業に、時には数時間、場合によっては数日を要することもあります。
流行ではなく、課題解決のためのAI
AIは既に私たちの身近な存在となっています。しかし、ジェニファーソフトはAI技術を単なる流行として導入することはありません。重要なのは「最新の技術を使っているか」ではなく、「お客様の課題を実際に解決できているか」です。
私たちは、統計手法、ディープラーニング、ルールベースモデル、そしてLLMまで、それぞれの技術の長所と短所を徹底的に分析しています。異常検知には統計モデルが有効であり、パターン認識にはディープラーニングが強みを発揮します。また、複雑な文脈理解にはLLMが優れています。課題に応じて最適な技術を選択し、最も効果的な組み合わせを見つけ出しています。
これは、ジェニファーソフトが21年間に渡り培ってきた専門性の成果です。モニタリング分野において、何が本当に重要な問題なのか、どのデータに価値があるのか、そしてどの分析が実際の成果につながるのかを私たちは理解しています。
JENNIFER AI INSIGHTS:データからインサイトへ
AI技術の進化、そして私たちの約束
―― モニタリングを超え、AIインサイトへ
AI技術は、毎月のように新たなブレークスルーが生まれるほど急速に進化しています。より正確な分析、より深い推論、そしてより自然な対話が可能になりました。これからのAIは更に能動的に進化していくでしょう。必要なデータを自ら探し出し、関連情報を統合して問題の原因や背景まで説明するだけでなく、予防的な提案や自動最適化までできるようになると考えられます。
ジェニファーソフトは、こうした技術の進化を継続的に製品へ取り入れていきます。しかし、私たちの原則は変わりません。技術は目的ではなく手段です。 お客様に実質的な価値を提供する製品を開発すること、それが最優先の使命です。
差別化されたJENNIFER AIの基盤技術
これからご紹介するJENNIFERインサイト(AI)の各機能は、それぞれ明確な目的を持ち、最適な技術によって実装されています。統計手法、ディープラーニング、ルールベースモデル、LLMなど、多様な技術を基盤とした独立機能が組み合わさることで、「より簡単なモニタリング」を実現します。
統計手法から始まるインテリジェントモニタリング
先ずは、統計手法を活用した機能からご紹介します。
異常イベント(異常検知)
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異常イベントは、各種メトリクスから異常値を検出し、運用担当者へ通知する機能です。従来は「CPU使用率が90%を超えたらアラート」といったように、運用者が個別にしきい値を設定する必要がありました。しかし、マイクロサービス環境では監視対象のサーバーやサービスが数十、数百に増えるため、CPU使用率やメモリ、応答時間毎に基準値を設定することは現実的ではありません。
異常イベントは過去のデータパターンを学習し、正常な範囲を自動的に設定します。通常とは異なる変動が発生した場合に自動で通知を行うため、異常の早期発見が可能になります。また、複数のメトリクスへ一括適用できるため、設定作業の負担を大幅に軽減します。
メトリクス相関分析
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異常イベントによって異常の兆候を検知した後は、メトリクス相関分析で原因を追跡できます。例えばCPU使用率が急上昇した場合、それがトラフィック増加によるものか、あるいはメモリの逼迫が原因なのかを判断する必要があります。JENNIFERはピアソン相関係数を用いて、メトリクス間の関連性を数値として可視化します。
更に一歩進み、時間差相関分析(Lag Correlation Analysis)にも対応しています。トラフィックの増加が先に発生し、その後CPU使用率が上昇し、最終的に応答速度が低下するといったように、時間差を伴って伝播する障害の流れも追跡できます。
ディープラーニングによるパターン認識
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続いて、ディープラーニング技術を活用した機能をご紹介します。本機能は、JENNIFER独自のチャートである「X-View」に適用されるため、先ずはX-Viewチャートについて説明します。
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X-Viewは、JENNIFERにおけるトランザクション分析の中核機能であり、ユーザーからのリクエスト1件を1つの点として表示します。X軸はリクエストの完了時刻、Y軸は各リクエストの処理時間を表します。チャートの上部に点が多く分布している場合は、応答遅延のトランザクションが多く、パフォーマンスの改善が必要であることを示します。一方、下部に点が集中していれば、多くのリクエストが高速に処理されており、システムが安定して稼働している状態と判断できます。
このようにX-Viewは非常に強力なモニタリングツールですが、散布図の形状をシステムの状況と結び付けて解釈することに慣れていない場合、理解し難いこともあります。X-Viewパターン認識は、チャートをリアルタイムで分析し、「ウェーブ(波打ち)パターン」や「ウォーターフォール(滝水)パターン」といった障害特有の傾向を自動的に検出します。例えば、波打ちパターンが検出された場合、「トラフィック増加に伴い応答時間が不安定になっている」といった分析結果を提示します。
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この機能は、フューショットラーニング(Few-shot Learning)と呼ばれるディープラーニング手法によって実装されています。2つのパターンを比較して類似度を算出する仕組みのため、ユーザー自身がパターンを登録して活用することも可能です。ブラウザ上で動作するため専用サーバーは不要で、高速な応答性能を実現し、1秒毎にリアルタイムでパターンを認識します。この「ブラウザ上でのディープラーニング」の構造は、その独創性と実用性が評価され、特許として登録されています。
類似アプリケーションの検索
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同じフューショットラーニングモデルを拡張し、類似アプリケーション検索にも対応しています。X-Viewパターン認識が「現在のチャートが特定の障害パターンとどれだけ似ているか」を評価するのに対し、類似アプリケーション検索では「2つのアプリケーションのX-Viewパターンがどれだけ似ているか」を分析します。
近年、多くのシステムがマイクロサービスアーキテクチャで構成され、1つの機能を実現するために複数のサービスが連携しています。そのため、あるサービスで問題が発生すると、関連する他のサービスへ連鎖的に影響が及ぶことがあります。類似アプリケーション検索を活用すれば、数十のサービスを個別に確認することなく、障害の影響範囲を迅速に把握し、原因追跡を効率的に行うことができます。
代表トランザクションフィルタリング
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全ての問題をディープラーニングで解決する必要はありません。適切な工夫を行えば、シンプルなルールだけでも多くの課題に対応できます。代表トランザクションは、応答時間やエラー種別などを基準に類似したトランザクションを自動的にグループ化するルールベース機能です。X-Viewで確認すべきトランザクション数を大幅に削減し、重要なポイントに絞った迅速な分析を可能にします。
ルールベースで専門家のノウハウを活用
アプリケーションインサイト
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アプリケーションインサイトは、APM専門家のノウハウをルールベースモデルとして体系化した機能です。ダッシュボードで選択した対象の直近10分間のデータを自動分析し、あらかじめ用意されたシナリオに基づいて問題を分類します。
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リアルタイムモニタリングにおいては、迅速な対応が重要です。しかし、ダッシュボードやアラートで異常の兆候を発見しても、正確な原因を特定するためには複数の画面を行き来しながら、さまざまな指標を組み合わせて確認する必要がありました。
アプリケーションインサイトでは、ヒートマップチャート上で「SERVICE_EXCEPTION」や「BAD_RESPONSE_TIME」といった問題の種類と発生頻度をリアルタイムに表示します。特定の問題を選択すると詳細分析のポップアップが表示され、「どのアプリケーションで問題が発生しているか」といった具体的な情報を確認できます。更に、トランザクション分析など次に取るべき対応も提案されるため、問題の検知から詳細分析、原因特定までを一つの流れとして効率的に進めることができます。
LLMがもたらす対話型モニタリング
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続いて、LLMを活用した機能をご紹介します。LLM(Large Language Model)は、自然言語を生成できるAI技術です。JENNIFERでは2年前からLLMを活用し、ユーザーの利便性向上に取り組んできました。現在では、更に進化した新機能を提供しています。
ヘルプチャットボット
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先ず、多くのユーザーに既にご利用いただいているヘルプチャットボットをご紹介します。JENNIFERはAPMソリューションであるため機能が豊富で、専門用語も多く、マニュアルから必要な情報を探し出すのが難しい場合があります。ヘルプチャットボットは、こうした不便さを解消するために開発されました。
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この機能は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術によって実装されています。JENNIFERのマニュアルからユーザーの質問内容に最適な情報を検索し、正確な回答を生成します。ここで重要となるのが検索品質です。最良の結果を提供するため、検索システムはJENNIFER専用に独自開発されており、汎用的なソリューションよりも高精度な回答を実現しています。
ヘルプチャットボットは、これまでの2年間で25,000件以上の質問に対応し、現在も月間1,000〜2,000件の問い合わせを処理しています。マニュアルを探し回る必要がなく、すぐに正確な回答を得られるため、顧客満足度の高い機能となっています。
インサイトチャット
昨年10月に新たに登場したインサイトチャットは、自然言語での対話を通じてリアルタイムにデータを分析できる機能です。ヘルプチャットボットが「JENNIFERの使い方」を案内するのに対し、インサイトチャットは「お客様のシステムデータそのもの」を直接分析します。
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本機能には、テキストだけでなく画像も理解できるマルチモーダルLLMが採用されています。ダッシュボード画面をキャプチャして、「何故、サービスの応答時間が遅くなっているのか」といった質問を行うことができ、まるで隣で同じ画面を見ながら分析しているかのような体験を提供します。
更に、インサイトチャットはJENNIFER Open APIをツールとして活用できるよう設計されています。AIが質問の意図を理解し、必要なデータを自動的に取得します。分析結果はテーブルやチャートとして可視化され、状況を一目で把握できます。
また、JENNIFERではAPIの呼び出し履歴や推論プロセスも透明性をもって公開します。AIがどのデータを参照し、どのような論理で結論に至ったのかを確認できるため、分析結果の検証と信頼性の確保が可能です。インサイトチャットにより、必要なタイミングで専門家レベルのサポートを受けることができます。
複雑なデータをシンプルに
スタックトレースインサイト
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スタックトレースインサイトは、複雑なエラーの呼び出しスタックを自動的に分析し、ボトルネックとなる箇所を特定する機能です。アプリケーションでエラーが発生したり、応答が遅くなった場合、スタックトレースを確認すると数十から数百に及ぶ関数呼び出しが表示されます。その中から実際の原因を見つけ出すことは、熟練した開発者であっても容易ではありません。
スタックトレースインサイトは、単一のエラー分析から大量データの集計分析まで対応します。個別の遅延リクエストを分析する場合は個々のスタックを確認し、全体的な性能傾向を把握する場合はSFRチャートを活用します。スタックトレースレコーダー(Stacktrace Recorder)は、数百のスタックトレースを1つのチャートとして集約し、どの関数で処理時間が消費されているのかを可視化します。実運用環境で繰り返し発生するボトルネックを迅速に発見するうえで、特に効果的です。
トランザクションインサイト
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トランザクションインサイトは、単一のトランザクション内で発生したあらゆるデータを総合的に分析し、問題の根本原因を特定する機能です。JENNIFERはトランザクションの実行時に、SQLクエリ、外部API呼び出し、エラーメッセージなど多様な情報をプロファイルとして収集します。1つのトランザクションでも数十から数百のプロファイルが記録されるため、その中から本当の原因を見つけ出すには時間がかかる場合があります。こうした状況でトランザクションインサイトが役立ちます。
トランザクションインサイトは、Service Exceptionが発生した際に単にエラーメッセージを表示するだけでなく、例えば、「データ追加時に『id』値が存在しなかったことが原因です」といった形式でエラーの背景を説明します。更に、「最適な解決策は、データベーステーブルの『id』フィールドを自動増分(auto-increment)に設定することです」といった具体的な対応方法まで提示します。
スタックトレースインサイトやトランザクションインサイトのような機能が、長く複雑なデータを事前に分析することで、運用担当者は原因特定にかかる時間を短縮し、問題解決そのものに集中できるようになります。